【吉配信】~森とヒトと

http://yoshi-mori.blogspot.com/ --- 過去の「吉配信」のなかから、「木材」「環境」関連のトピックスメールを  ブログ化してます。 (木材、環境関連 ネタの 情報共有していきたいですね。 「吉・森」 【吉配信】~森とヒトと

Thursday, May 11, 2006

【国産材戦略開始 Ⅲ】

Subject: 【国産材戦略開始 Ⅲ】
Date: Sat, 23 Jul 2005 12:43:49 +0900


「エアバス VS ボーイング」

日本航空機市場を欧州とアメリカの企業が取り合い。

木材市場も同じです。8割が輸入の木材。
日本で林産メジャー、なぜ育たなかったの?

矛先を、航空機と同じように中国に向けてくれないかなぁ。

◇【高品質化と国際化で成長するフィンランドの林産業】
http://www.jetro.go.jp/biz/world/europe/fi/reports/05000462

添付画像は、日本向け輸出で儲けた欧州林産企業の本社。
日本林産企業にこんなお洒落で立派な本社がありますかぁ?


日本の海運企業の船員さんの3分の2は50歳以上。
高齢化が進んで死活問題。外国人の船員さん急募。

日本の農業と林業も、10年後にはお爺さんとお婆さん。
今のうちに開国しないと、誰も木を切らず土地を耕さず。

そんな議題は、木材学会であるのかな。ないのかな。

700兆円の借金のある政府にはあまり期待できませんので
民間企業、外資、外国人労働力の力で。増税は避けまして。

2003年春行われました木材学会にて
キラリと光る論文、講演の一部です。

『持続可能な資源循環型社会構築への道』

メインシンポジウムのタイトルにすべては集約。

月火水木金土日のうち、
アメリカ主導の「月」「火」「金」にそろそろピリオド打って、
地球全体主導の「木」「水」「土」を大切にする時代にっ! 


◆2003年春 日本木材学会
http://brc.wood.agr.kyushu-u.ac.jp/wood2003/

第53回日本木材学会大会  運営委員長
九州大学大学院農学研究院  田中浩夫教授

21世紀は生物資源の活用の時代です。
地球上に存在する生物資源の9割は樹木です。

人間が家、家具、紙、エネルギーなどに利用しているのは年成長量の
4%弱に過ぎません。96%相当量はただ枯れて、単に微生物の餌に
なっているだけです。腐る分を少しだけ人間のために活用すれば、
化石資源の節約、地球温暖化防止にも役立ちます。原子力発電も
増やす必要もありません。欧米ではすでにこの方向へ進みつつあり
ます。日本でもこれにやっと気付き路線変更が計られました。

木材学会では生物資源の9割を占める木材をいかに有効に利用して
人類の福祉に役立てるかを常に考えています。


                      
┏━━━━━━━━━━━━━━━━┓
吉┃通┃信┃  木  No.003
━┛━┛━┛  yositanaka@nifty.com
┗━━━━━━━━━━━━━━━━┛



産官学より一つずつ。

ウッドワン会長の【木材は為替である】は名文中の名文。

木材の為替に、《人民元》が大きく加わります。



■「木材産業から見た日本林業」  (株)ウッドワン  中本 利夫氏

1) 再生産可能な森林資源

 産業革命以来、自動車や飛行機の利用など、われわれの生活の急速な進歩に伴い、
鉄・銅・アルミ・ニッケル等の資源が消費されてきましたが、これらは一体、あと幾
世紀もつのでしょう。人類がこの世に誕生して約400万年になりますが、このよう
な無駄遣いをしていてよいのでしょうか。しかもこれらは掘り出しただけでは何の役
にも立たず、石油に代表される化石燃料によって製錬されて初めて、鉄の棒やアルミ
の板となって役に立つのです。その石油が、あと40年、50年と言われています。さ
らにこの化石燃料は、燃焼させる際に膨大な二酸化炭素を放出し、地球環境問題の一
因ともなっているのです。

 そういう意味において森林資源は、工業資源のなかで唯一、再生産可能な資源であ
るということを考えてみる必要があります。森林資源の地球上の蓄積量は約3500億
m3とされていますが、年間の使用量が約35、6億m3なので、他の資源なみに計算
すると100年分になります。しかし森林は成長するのです。1%でも35億m3なので、
地球上で森林が平均1%成長すれば、現在の消費量は、ほぼまかなえるという数字に
なります。

 なお戦後わが国で植林されたスギやヒノキは、スギで3%台、ヒノキで2%台と推
定できます。ニュージーランドのラジアータパインに至っては7-8%も成長してい
ます。


2) 森林資源の抱える問題

 しかし、地球上で1%以上の成長ができているかといえば、現在、環境問題で大き
く取り上げられている、東南アジアの手付かずの熱帯雨林、あるいはシベリアの森林
は、極層林といえば響きはいいですが、裏返せば成熟林、悪く言えば老齢林です。面
積当たりの成長をすでに止めた、限界の状態になっているのです。
 ここは択伐林方式か、皆伐・再植林方式、いわゆる法正林施業で伐採し、次世代の
森林の成長を促していくということを、もっと真剣に考えていかなればなりません。
 しかし一方で、東南アジアにおいてもシベリアにおいても過伐されてきたのも事実
です。今や地球規模で、再生産可能な森林経営を真剣に検討すべき時だと思います。


3) 日本の林業の実態

 さて、戦後われわれが植林した日本の林業は、今どうなっているのでしょうか。
 国土面積の約67%にあたる、2500万haの森林は、戦中戦後、オイルの代わりと
して使われ、木炭自動車まで走り、戦後の経済復興とともに多くの住宅用建材、ある
いは製紙用パルプ材として瞬く間に過伐されました。その後風水害等の問題もあり、
大規模な植林事業が開始され、現在では森林全体の40%にあたる、1000万haを超
えた段階になりました。林野庁の計画では1300万haとのことでしたが、その後ど
うなったのでしょうか。

 成長が早いのはスギで、早くに植林されたものはすでに50年生となり、在来では
すでに伐期に達しているのですが、なかなか伐れません。不採算林になってしまった
のです。

 昨年末、久しぶりに北海道の函館に行きました。道南にも戦後、スギが植林され、
製材品は東京送りだそうですが、原木価格が立方10000円をわっているのです。南
九州の宮崎あたりもその程度の相場で、広島・岡山あたりでは14000-15000 円だ
そうです。

 私事ですが、別会社の中本造林が、平成元年に林業経営というタイトルで、農林水
産大臣賞とともに、最優秀賞として天皇杯を頂戴いたしました。皇居に参内して両陛
下の拝謁を仰せつかり、7,8分のご下問を受けることとなりました。そこで私は長
伐期論を展開していることをご紹介申し上げ、「100年も200年も木を伐らないとな
ると、どのように林業を経営されるのか」というご質問に「高密路網を作って適当な
間伐をし、その収入で林業経営がなんとか成り立っています」と、お答えしたわけで
す。

 当時は、まだ間伐材が収入を賄える値段でしたが、あれから15年たった今日、中
目材が市場で14000-15000円、小径木は10000円にも満たず、伐採搬出コストさ
え難しい状況に入ってしまいました。

 これが、日本列島を取り巻く、伐期を迎えたスギの山なのです。皆伐してしまえば
ロギングコストは安くつきますが、そこには再び植林しなければなりません。

 以前、業界紙にある山林主の投書が載っていました。代々持っている山があり、父
親が植林し、青年時代には下刈りやら手入れに連れて行かれ、50年生になったら伐
ってもよいとのことで、やがてその時期が来たので森林組合に頼んで流木を売却し、
植林もしてもらった。しかし2年後には、山林の売却代金が皆、無くなってしまっ
た。50年生の木を伐って、2年生の木になってしまったと。3年目からは金がないの
にどう手入れするのか、やり方が悪かったのだろうか、諸先輩のご意見を承りたい
と。笑えない事実です。

 こうして、伐ろうにも伐れない状況に追い込まれているのが日本の林業なのです。
まして昨年末に行った道南では、戦中戦後に伐った雑木林のうち、ブナは150年、
カバでも100年はおきたいということでしたが、気候からみて、伐期までにまだま
だ時間を要するこの林業を、いかにしてつないでいくのか、考えさせられる問題で
す。


4) 国際競争力を失った日本の林業

 さて、日本のスギはなぜ国際競争力に負けるようになったのでしょうか。これは私
の持論のようになってきましたが、8割以上、外為で説明できるのです。

 米ドル360円時代に米材の輸入が始まりましたが、1960年代には、本格的に米材
が日本へ輸入されるようになりました。その競争に押されて日本のスギもどんどん販
売価格が下がりましたが、当時はまだ伐る時期でなく、「外材輸入は日本の木造住宅
を維持する意味で千載一遇のチャンス」とも言われました。外材がなければコンクリ
ートや鉄骨に変わっていただろうにという意味で、なるほどと感心したものです。

 しかし今、日本のスギがようやく伐期を迎えたものの、外材に押されて動きが取れ
なくなり、米材もすでに国際競争力に押され、力不足になっています。

 今、我が国で最も国際競争力が強いのは、フィンランドに代表される北欧材です。
ここで製材され、ドーバー海峡、地中海を渡り、インド洋、東シナ海を通って日本に
到着したものが、中国山脈で伐採され、40キロ足らずの広島まで運ばれるものより
もコスト競争力が強い、それが現実なのです。そして、その最大の理由が外為なので
す。

 一例をあげると、米ドル360円時代に、私共が進出しているニュージーランドは、
400円しました。戦後、一人当たりの国民所得が一番高かったのは、当時ニュージー
ランドでした。しかし、本国にあたるイギリスのEC加盟とともに通貨は弱くなり、
現在約60円。一昨年の9月末には、44円までいきました。かつての400円からみ
れば9分の1です。60円としても、7分の1近い下落です。米ドルは、360円が現
在120円。3分の1まで下がりましたが、ニュージーランドの7分の1には勝てま
せん。


5)国際競争力に強い北欧材

 今、フィンランドを始め、北欧材にそこまで力があるのはなぜなのでしょうか。

 最大の理由として、隣の旧ソ連のルーブルの暴落があげられます。かつて米ドルと
肩を並べていた時代から、ベルリンの壁が壊れて以来暴落の一途を辿り、当時からみ
ると100分の1を割り込むような状況で、国際通貨からみるとタダ同然になってし
まいました。こうしてあの膨大な国境から、どんどん木材が輸出されているのです。

 一昨年対昨年の輸出量をみても、35%も増加しています。フィンランドはこの原
木を製材製品にして日本へ送り、競争力を強めているのです。


6)ニュージーランドにみる外為の影響

 ニュージーランドで、私ども三箇所の山林と工場のロギングコストは、平均で約
30ドル、立方当り1800円。一方、中国山脈で木を伐り、40キロほどの廿日市市の
工場に戻ると、10000円を超えてしまいます。便利の悪いところでは12000円にも
なります。 このばかげた現実も、外為で説明できるのです。

 NZドルが7分の1近くですが、1800円を7倍すれば12600円。NZドルが昔の
為替に戻れば、まことに対等なのです。

 日本が自動車工業やIT産業など、貿易によって外貨を稼ぎ、経常収支が大幅黒字
になってすでに十数年。今年もまた、貿易収支は前年対比で大幅に伸びると、最近の
記事では伝えられていますが、これでは円は強くならざるを得ません。

 生産性の上がらない農業・林業が、この為替についていけるはずがありません。大
幅な貿易黒字という体質が変わり、日本が輸入国にでもなれば、円安となって解決す
るでしょうが、当分これは望めそうにありません。


7)長伐期林業への転換

 伐ろうにも伐れなくなった日本の植林地。しかし幸いなことに、木は伐らなければ
成長するのです。そこで、長伐期林業へ切り替えていくことが求められてくると思い
ます。

 わたしは早くから、長伐期林業への転換を始めています。吉野には、民有林で300
年を超える森林をお持ちの林業家もおられますが、私は当面100年林業を目指して
います。100年たったときには、孫が200年生にすると言えばいいのです。

 ここで、長伐期にするためには次の条件が必要です。まず、長伐期に耐えうる優良
品種であることです。わたしは、中国山脈に昔からある八郎スギと呼ばれる天然スギ
を母樹として、挿木苗を養成してきました。また、長伐期のためには弱度の間伐を繰
り返していきますので、高密路網が必要になります。

 しかし、これらに切り替えるための最大の難点は日本の税制で、三代相続したら、
財産が無くなってしまうのです。これでは200年、300年の林業は成り立ちません。

 そこでひとつの提案ですが、例えば100年生を超えるような木は、伐ったときに
は税金をとるが、伐らなければ無税扱いとすれば、自分の財産として、伐らずに置く
ようになります。税法で長伐期を誘導するのです。

 いま、法隆寺の五重塔は、建立されて1300年が過ぎ、樹齢は1000年を超えてい
ると言われていますが、万一ここが火災に遭えば、建て替えるヒノキが日本のどこに
あるのでしょう。調べたことはないですが、とてもあるとは思えません。これほどま
でに近代化された国家にあって、神社仏閣を建立できる木がないとは、なんとも残念
なことです。

 では、国が経営すればよいかというと、ご承知のように、国有林が大幅赤字を一般
財源で賄わざるを得なかったように、国が100年200年林業を目指せばどんなに高
いコストになるかは実証済みです。

 ここは是非、民間で出来るようにすれば、税金で取り上げることさえなければ誘導
する方法はあるのです。伐るまでは税金を取らない、待ってやる。これだけで、かな
りのものが出るのです。林業家に100年200年の山を作らすことは可能なのです。
100年を越したような森林というのは民族の財産であり、誰が守りをしているかだ
けのこと、そんな考え方で進めていくべきでしょう。





■「森林の多面的機能と木材利用」  東京大学 太田猛彦氏

真の循環型社会では、森林の本質を踏まえた上での木材の積極的利用が、
以下のような理由で私たちの責務となってきた。すなわち、

①木造住宅や木製品は炭素の貯蔵庫である。
②加工エネルギーが小さい。
③有害物質を発生させない。
④最終的にエネルギー源として利用できる。
⑤化石燃料を代替する。
⑥伐採後も林地として維持されて入れば、再びCO2を吸収し、炭素が貯蔵される。

すなわち、21世紀に生きる私たちは、真の循環型社会を構築するために、
木材、特に輸送エネルギーの少ない国産材を積極的に使う責任があるのである。
これは森林の新しい「木材利用原理」である。木材利用さえも「環境原理」に組み
込まれる可能性がある。

真の循環型社会構築のために果たす森林・自然域の役割としては、まず
①現太陽エネルギーの取り入れ口であることが挙げられる。
次に、
②地球表面での各種の循環を健全化し、これによって地域及び地球の環境保全に
貢献していることが重要である。そのため、この地域は人類にとって不可欠な土地
利用と言ってよい。

このことを踏まえると、21世紀においては、森林の多面的機能、中でも環境保全機能
を十分発揮させる森林管理が不可欠であることがわかる。さらにバイオマス循環を
意識した新しい木材利用原理を十分発揮させることも必要である。

私たちは、循環型社会構築の先頭に立っているのである。 

                      



■『新たな森林施策の方向について』  林野庁 計画課長 梶谷辰哉氏

1.森林資源の現況

 現在、人工林は全森林の4割、1030万ha。そのうち約950万haは戦後
の造成、あるいは再造林されたものであり、戦前からの人工林は80万haと推
定される。

 昭和36年当時、戦前からの人工林は280万ha。したがって、おおよそ8
00万haは戦後新たに造成されたものと推察(昭和35~40年の造林面積の
うち、拡大造林は75%を占めており、戦後、人工林化が進行)。なお、戦前
からの人工林のうち約200万haは、その後、伐採され再造林され現在に到っ
ている。

 蓄積(森林の中の樹木の体積)については、昭和32年に18億m3であっ
たものが、平成12年に39億m3と、戦後2倍以上に増大している。内訳と
して、針葉樹が9億m3から27億m3、広葉樹が9億m3から12億m3とな
っており、蓄積の増大のほとんどは人工林の蓄積の増加によるものと考え
られる。


2.木材生産の推移 

 木材生産については、戦前において、パルプチップ用、製材用といった
用材用の生産が昭和12年1700万m3から昭和18年3200万m3まで倍増
(丸太材積)。薪炭材の生産も昭和12年度2600万m3から昭和17年度
4700万m3に増大した。

 戦後、一旦木材生産量は昭和12年当時の水準まで落ち込むが、復興
需要等で、用材需要が増大。昭和21年(終戦)2400万m3から昭和31年
4200万m3、昭和41年5200万m3に倍増。一方、薪炭材の生産は、石油、
ガスの普及に伴い、昭和21年2000万m3から昭和41年600万m3と減少した。
このような、薪炭材需要の減少に伴い、薪炭材生産用の低質広葉樹
を伐採し、用材用の森林として針葉樹の人工林造成を行う拡大造林が進展した。

 その後、外材輸入の自由化に伴い、国産材生産量は減少。製材用では、
昭和45年(1970年)に2700万m3から平成12年(1990年)に1300万m3、
パルプ用でも、昭和45年に1600万m3から平成12年に500万m3、薪炭材も
昭和45年200万m3から平成12年100万m3に半減している。


3.森林資源管理の課題
 
 こうした森林資源と木材生産の状況を踏まえると、今後の森林資源管理の
推進と林業の活性化の観点から課題として以下の点が挙げられる。

(1)森林に対するニーズにいかに応えるか ~ 森林をどのような姿に誘導
  するのか。
(2)林業の採算性の悪化への対応 ~ いかに林業の活性化を図るのか。
(3)低迷する国産材利用の促進 ~ 成熟化しつつある人工林資源をいかに
  活用するか。


4 森林・林業基本計画
 
① 森林のあるべき姿

 上記の課題に応えるため、平成13年に森林・林業基本法が制定され、こ
れまでの木材生産を主体とした政策から森林の有する多面的機能の持続的発
揮を図るための政策へと転換した。森林の基本的な整備の方向を分かりやす
く示すため、地域合意の下、森林を「水土保全林」「森林と人との共生林」
「資源の循環利用林」の3つに区分し、区分に応じた森林のあるべき姿を提
示することとした。基本的には、多面的機能の発揮に有利な、より根系の発
達した長伐期の方向を指向することし、中でも択伐等により部分的に伐採す
る育成複層林を指向している(将来的には全森林の3割に相当する870万
h aまで誘導)。

 炭素の貯蔵庫である森林の総蓄積については、長伐期を指向することによ
り、成長のペースは低下していくものの、現在の39億m3から将来的には
51億m3まで増加させることを指向している。

② 木材生産の可能性

 昭和60年以降、戦後植栽された人工林が伐採されはじめる。その量は、
平成12年度で200万m3程度、現在の木材生産の1割程度と推計される。
現在、戦後造林された人工林のうち、伐期(45年生以上)に達しているも
のは、人工林の2割にあたる180万ha。このうち半数の90万h aは戦後
の拡大造林期に植栽されたものである。

 近年の再造林面積から類推すると、人工林の伐採面積は約1.5万ha相当
であり、主伐等による伐採量は約840万m3と推計される。

 森林の齢級配置から見ると、伐期に到達する人工林は10年後には480
万haに達する。仮にこの480万ha全てを一度に伐採すると約10億6千万
m3(日本の総木材需要量の10カ年分程度)の生産が可能となるが、その
後、伐期に達する人工林を全て伐採すると仮定すると、2015年には1億
m3を超えるが2030年には3千万m3を下回るなど、木材生産量の変動
が大きくなる計算となる。

 また、木材生産量の上限として森林の成長量を伐採するとした場合、伐採
量は5千万m3で安定的に推移することから、森林の持つ木材生産のポテン
シャルは約5千万m3ということが出来る。

③ 森林・林業基本計画の目標

 近年の、伐採性向を見ると、伐採齢は伸び、高齢級での伐採が増加する傾
向にある。

 平成13年に策定された「森林・林業基本計画」における、森林の整備、木
材の供給及び利用に関する目標においては、水源のかん養、地球温暖化の防
止とといった森林の多面的機能の発揮に配慮して、今後、いわゆる皆伐は現
状(800万m3)維持で、複層伐、高齢級間伐による木材生産が増加する
ことを見込んだ。

 この結果、10年後の木材利用目標は2500万m3となり、このうち主伐は1
000万m3。これは、戦後造成された人工林からの700万m3(4万ha)の伐採を
含む。(残りは、戦前からの人工林、間伐材、若干の天然林からの伐採)

 以上の状況において、計画どおりの整備、伐採が行われるとすると、将来
的には複層林造成等により齢級配置の平準化が図られるとともに、蓄積は最
大51億m3まで増加することが見込まれる。伐採量については、木材需要に
大きく左右されるが、森林資源の条件を前提とすると3500万m3程度の木材
生産が可能と推計される。


5.地球温暖化対策と木質バイオマス利用

 昨年6月に日本は京都議定書を批准した。京都議定書において、日本は1
990年比で温室効果ガスを6%削減することを目標としている。この目標
達成に向けた政府の行動計画である「地球温暖化対策推進大綱」においては、
6%の削減目標のうち3.9%を森林の吸収によることを想定している。

 しかしながら、林業生産活動が低迷している中、現在の森林整備の水準で
は3.9%の達成も困難な状況となっている。今後、木材生産活動の活性化
と森林整備の推進が不可欠と考えている。

 地球温暖化対策の中で期待されているものにバイオマスエネルギーがある。
議定書のルール上、森林の伐採が温室効果ガスの排出として位置づけられて
いるため、ダブルカウント排除の考え方から木質バイオマスエネルギー利用
は温室効果ガスの排出として計上されないこととなっており、注目を集めて
いる。

 今後、循環型社会の形成の観点からも、循環型資源である木材を有効的に
利用し、森林を持続的に利用していくことが重要であり、このような意味か
らも、木材学会に対する期待はますます大きくなっていくと考えている。

3月23日 日本木材学会シンポジウムにて。












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